この冬、ひとつ虫眼鏡を手に入れた。直径4~5センチの小ぶりなものだけれど、小学生以来かもしれない久しぶりの世界が向こうに広がった。
今朝、ちらちらと落ちてくる雪を見上げているうちにふと思い出して数年ぶりに読み返したのが、80年前に書かれた中谷宇吉郎の『雪』。その一節に目が留まる。
「雪の降る日一箇の虫眼鏡をもってそれを自分の眼で見ることは無意味なことではない。」
雪は「天から送られた手紙である」という言葉でも知られる同書。また何年か経ったら、雪の降る日に読み返したくなりそうだ。